不動産売買の流れ

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不動産の決済の日に、すべてが同時に動く
不動産の売買の手続きで、一番密度が高いのは決済の日である。この日に、買主の融資が実行され、売主の抵当権抹消と所有権移転の登記が申請され、固定資産税や管理費が日割りで精算され、鍵が渡される。
不動産の順序を誤ると事故が起きる。代金を払ったのに登記が入らない、あるいは抵当権が残ったまま所有権が移るという事態になりうる。そのため実務では、司法書士が「登記できる状態である」と確認してから、金融機関が送金を実行するという手順がとられる。関係者が同じ場所に集まるのは、この確認のためである。
決済の場に集まるのは、売主、買主、双方の仲介業者、司法書士、融資を実行する金融機関の担当者、売主に抵当権者がいればその金融機関の担当者である。不動産の決済の場所は、買主が融資を受ける金融機関の店舗になることが多い。
不動産の当日の順序——司法書士が本人確認と書類の確認を行う。登記できる状態であることが確認されると、融資が実行されて売主の口座へ送金される。着金が確認されたら、固定資産税等の精算金を清算し、領収書を交わし、鍵と関係書類を引き渡す。司法書士はその足で法務局へ登記を申請する。
不動産を現金で買う場合も、順序は変えない。融資の実行がないぶん簡単になるが、登記できる状態の確認を先に済ませてから送金するという順序そのものは同じである。
不動産の決済は平日にしかできない。法務局と金融機関が動いている必要があるためである。また午後遅い時間になると当日中の登記申請が間に合わないので、午前中から昼過ぎに設定されることが多い。
2022年5月から、契約は電子化できるようになった。相手方の承諾を得れば35条書面と37条書面を電磁的方法で提供でき、押印も不要になった。ただし登記の申請には別の手続きが必要なので、契約が電子化されても決済の段取りは変わらない。
個人どうしで売買する場合も、流れは変わらない。免許が必要なのは報酬を得る目的で反復継続して媒介を行う場合なので、自分の不動産を自分で売ることに免許は要らない。ただし重要事項の調査、契約書の作成、登記の段取りをすべて自分でやることになる。登記だけは司法書士に依頼するのが通常で、決済の日の順序(登記できる状態を確認してから送金)も同じである。
残金決済という呼び方。手付金を除いた代金の残りを払う日なので、残金決済、残代金決済とも呼ばれる。同じ日を指す言葉で、立会いという言い方をする場合もある。呼び方が違うだけで、やることは同じである。
全体のスケジュールを1枚にすると。不動産を買う側は、資金計画(1〜2週間)→ 物件探しと内見(人による)→ 購入申込みと事前審査(1〜2週間)→ 重要事項説明と売買契約(1日)→ 本審査(2〜3週間)→ 決済と引渡し(1日)。売る側は、査定(1〜2週間)→ 媒介契約(1日)→ 売り出しと内見対応(読めない)→ 購入申込みの受領 → 売買契約(1日)→ 決済と引渡し(1日)。物件が決まってから引渡しまでが1か月半から2か月半、というのがこの合計である。
申請に使った書類はどうなるのか。登記の申請書と添付書面は法務局で保存される。保存の期間は書類の種類ごとに定められており、保存期間内であれば利害関係人は閲覧を請求できる。手元に残るのは登記完了証と、買主に交付される登記識別情報通知である。
不動産の売買の流れを、図にするなら3列。左に「買う側」、右に「売る側」、真ん中に「共通」。共通の欄に入るのは、売買契約と決済の2つだけである。それ以外はそれぞれが別に動く。
買う側——資金計画、物件探し、内見、購入申込み、事前審査、(共通:重要事項説明・売買契約)、本審査、(共通:決済と引渡し)。売る側——査定、媒介契約、売り出し、内見の対応、申込みの受領、(共通:売買契約)、抵当権抹消の準備と引越し、(共通:決済と引渡し)。
業者側から見た流れ。不動産の営業の仕事は、売却の依頼を受ける(媒介契約)か、買主を見つけてくる(客付)かに分かれる。媒介契約を結んだらレインズへの登録、広告、問い合わせの対応、案内、重要事項の調査、契約書の作成、決済の立会いまでを担う。成功報酬なので、契約に至らなければ売上はゼロになる。
お金が動くのは3回
契約時に手付金、決済時に残代金と諸費用、そして取得のおよそ半年後に不動産取得税。仲介手数料は契約時に半額、決済時に半額とする例が多い。手付金は代金の一部に充当されるので、諸費用の合計に足すと二重に数えることになる。
契約の日に、その場で何が起きているか
不動産の売買契約の日は、書類に署名するだけの日ではない。
順番が決まっている。①宅地建物取引士が重要事項説明を行う(宅地建物取引業法第35条)②売買契約書を読み合わせる ③署名・押印 ④手付金を渡す ⑤仲介手数料の半金を払うことが多い。
重要事項説明が先である。説明を聞いてから契約する、という順番に意味がある。聞いた内容に納得できなければ、そこで止められる。契約書に署名したあとで「聞いていない」と言っても戻せない。
所要時間。不動産の売買契約は2〜3時間かかることが多い。重要事項説明だけで1時間前後になる。短く終わった場合は、読み飛ばされた項目がないかを疑う。
司法書士は買主が選ぶことが多い
登記の申請を担うのは司法書士である。融資を受ける場合は金融機関が指定することが多い。報酬は自由化されているので事務所によって差があるが、登録免許税は法律で決まっているため誰に頼んでも同じである。
契約当日に持っていくもの
買主。本人確認書類、印鑑(実印でなくてよいことが多い)、手付金、印紙代、仲介手数料の半金。手付金は現金ではなく振込にすることも増えている。
売主。本人確認書類、印鑑、登記済権利証または登記識別情報、固定資産税の納税通知書、建物の図面や設備の説明書。
当日に決めることが残っていないか。引渡しの期日、残していく設備と撤去する設備、固定資産税をどの日で按分するか。不動産の売買では、この3つを契約書に書き込むので、当日までに決めておく。
個人が自分で進めるときの順番
①相手を見つける ②条件を決める③重要事項にあたる内容を自分で調べる④売買契約書を作る ⑤手付金の授受⑥決済 ⑦司法書士に登記を依頼。
自分で調べることになるもの。登記事項証明書(権利関係)公図・地積測量図(境界)市区町村での法令上の制限上下水道とガスの引込み。
登記は司法書士に頼む。不動産の所有権移転登記は自分でもできるが、決済の日にお金と権利を同時に動かす段取りは専門家に任せたほうが安全である。
買う側から見た流れ
①探す ②内見する ③購入申込書を出す ④事前審査⑤重要事項説明を受ける ⑥売買契約・手付金⑦住宅ローン本審査 ⑧金銭消費貸借契約⑨残金決済・引渡し・登記。
買主が止められる場所。③の申込みまでは、いつでも引ける(申込みでは契約は成立していない)。⑥の契約後は、手付金を放棄すれば解除できる(相手が履行に着手するまで)。⑦で審査が通らなければ、ローン特約で白紙に戻せる。
買主が動く期間。不動産の購入は、探し始めてから引渡しまで3〜6か月が目安になる。物件が決まってからは1〜2か月。
司法書士が確認してから、送金が実行される
司法書士が本人確認と書類の確認を行い、登記できる状態であることを確認する。そのあとで融資が実行され、売主の口座へ送金される。着金確認後に固定資産税等を精算し、鍵と書類を引き渡す。司法書士はその足で法務局へ申請に向かう。
現金でも順序は変えない
融資の実行がないぶん手順は減るが、登記できる状態の確認を先に済ませてから送金するという順序そのものは同じである。契約と決済を同じ日にできるのは、主にこの場合である。
売却代金で完済して、同じ日に抹消する
抵当権は完済しなければ外れない。売却代金で完済する場合は、決済の日に送金・完済・抹消登記の申請を同じ場で行う。抵当権者の金融機関の担当者も決済に立ち会う。
全体の順序
買う側は、資金計画・物件探し・内見・申込み・事前審査・重要事項説明・売買契約・本審査・決済・引渡し。売る側は、査定・媒介契約・売り出し・内見対応・申込み受領・売買契約・抵当権抹消の準備・決済・引渡し。
不動産会社は、どの場面で何をしているか
①査定して価格の根拠を出す②媒介契約を書面で交付する(宅地建物取引業法第34条の2)③指定流通機構に登録し、広告を出す④内見を段取りする⑤条件を調整する⑥重要事項を調査して説明する(同法第35条)⑦契約書面を交付する(同法第37条)⑧決済の日程を組み、司法書士と銀行をつなぐ。
見えにくいが重いのは⑥。役所で法令上の制限を調べ、登記を取り、道路とインフラを確認する。不動産の売買で問題が出るのは、たいていここの調査が浅いときである。
売主が決済までに終わらせること
抵当権の抹消。住宅ローンが残っている不動産は、決済の日に一括返済して抵当権を消す。銀行に「いつ完済するか」を事前に伝えておく手続が要る。
引っ越し。引渡しの日には、原則として空の状態にする。残す設備は契約書に書いたものだけ。
ライフラインの精算。電気・ガス・水道は引渡し日で止める。不動産の決済が終わったあとに使用料が来ないよう、日付を合わせる。
住宅ローンは、契約の前と後で2回ある
事前審査(仮審査)。不動産を買う前に、いくらまで借りられるかを確かめる。数日で結果が出る。これが通っていないと、売主側が申込みを受けてくれないことがある。
本審査。売買契約を結んだあとに申し込む。契約書と重要事項説明書を銀行に出す。2〜3週間かかる。
融資実行。決済の日に、銀行が売主の口座へ直接振り込む形が多い。
本審査が通らなかったら。住宅ローン特約(融資利用の特約)を付けていれば、不動産の売買契約を白紙に戻して手付金が返ってくる。特約の期限を過ぎると使えないので、契約書の日付を必ず見る。
ローンの手続と、不動産の手続はつながっている
不動産の売買の期間は、ローンの期間で決まる。
```
事前審査 数日
↓ 申込み・売買契約
本審査 2〜3週間
↓ 金銭消費貸借契約(銀行と)
融資実行 = 決済の日
```
金銭消費貸借契約。決済の前に、銀行と借入の契約を結ぶ。不動産の売買契約とは別の契約である。ここで金利のタイプと返済期間が確定する。
抵当権。決済の日に、所有権移転登記と同時に抵当権設定登記も入る。銀行はその登記が入ることを条件に貸す。
売る側から見た流れ
①査定 ②媒介契約 ③レインズ登録・広告④内見の対応 ⑤申込みを受ける ⑥売買契約・手付金受領⑦引っ越し・抵当権抹消の準備 ⑧残金決済・引渡し。
売主が動く期間。不動産の売却は、媒介契約から引渡しまで3〜6か月が目安。売れるまでの期間が読めないので、買い替えの場合はここが一番の不確定要素になる。
売主が用意するもの。登記済権利証または登記識別情報、固定資産税の納税通知書、建物の図面・設備の説明書、住宅ローンが残っていれば残高証明書。
2022年5月から電子契約ができる
相手方の承諾を得れば、35条書面と37条書面を電磁的方法で提供でき、押印も不要になった。IT重説と組み合わせれば非対面で契約できる。ただし登記の申請には別の手続きが要るため、決済の段取りは変わらない。
残金決済の日の、時間の流れ
不動産の決済は、銀行の営業時間に合わせて午前中に行うことが多い。
その場の順番。①司法書士が本人確認と書類の確認をする②問題がないと確認できたら買主が融資を実行する③売主の口座へ残代金が着金する④売主が鍵と書類を渡す⑤司法書士が法務局へ登記を申請しに行く。
司法書士が先に確認する理由。お金が動いてから登記できないと分かっても、もう戻せない。だから登記できる状態かを先に確かめる。司法書士は「登記できます」と言ってから、初めて振込のゴーサインを出す。
同時に払うもの。残代金、固定資産税の精算金、仲介手数料の残り、登記費用、司法書士の報酬。不動産の決済の日は、複数の支払いが1か所で同時に動く。
契約日と決済日は別の日
不動産の売買では、契約の日と決済の日が分かれるのが普通である。
なぜ分かれるか。買主が住宅ローンの本審査を通す期間が要る。売主が引っ越す期間が要る。この2つのために、契約から決済まで1〜2か月あける。
同じ日にできる場合。現金で買う、かつ売主が既に空けている物件なら、契約と決済を同じ日にまとめられる。ただし重要事項説明を受けてから契約するまでの時間が短くなるので、書面は事前に受け取って読んでおく。
売買契約書に何が書いてあるか
不動産の売買契約書は、決めたことを固定するための書面である。
主な項目。売買代金と支払いの時期手付金の額と、解除の期限引渡しの日所有権が移る時期固定資産税の按分の起算日設備の引継ぎ契約不適合責任の範囲と期間住宅ローン特約の期限違約金の額(代金の20%が上限になることが多い)。
読む順番。金額よりも先に「期限」を見る。手付解除の期限、ローン特約の期限、引渡しの日——この3つを外すと、あとから動けなくなる。
ひとことで言うと、決済の日に全部が同時に動く
不動産の売買の流れは、突き詰めると「決済の日をどう迎えるか」の準備である。
決済の日に同時に起きること。残代金が売主に着金する鍵と書類が買主に渡る所有権移転登記が申請される売主の抵当権が抹消される買主の抵当権が設定される固定資産税が按分される仲介手数料の残りが支払われる。
同時でなければならない理由。お金だけ渡して登記が入らない、登記だけ入ってお金が来ない——どちらも起きないように、司法書士が確認してから一斉に動かす。
それまでの手続はすべて、この日を安全に迎えるための準備である。
営業の側から見た1件の流れ
①反響(問い合わせ)を受ける ②内見に案内する③条件を詰める ④申込みを取る⑤重要事項の調査 ⑥契約 ⑦決済まで段取りする。
報酬はいつ入るか。仲介手数料は、契約時に半金、決済時に残り半金という分け方が多い。不動産の売買が成立しなければ報酬は発生しない(成功報酬)。
そこから来る力学。成約しないと報酬がないので、契約を急がせる動きが出ることがある。買う側は、その力学があることを知ったうえで、自分の期間で判断すればよい。
仲介が入る場合と、入らない場合
仲介が入る場合。媒介契約 → 広告・レインズ登録 → 内見 → 申込み → 重要事項説明 → 契約 → 決済。不動産会社が調査と書面を担う。
仲介が入らない場合(個人間)。重要事項説明の義務がない。だが調べるべきことが減るわけではない。法令上の制限、境界、設備の状態、すべて当事者が自分で調べることになる。
手数料の差。仲介手数料は不動産の売買代金3,000万円で最大105.6万円(税込)。個人間ならこれが不要だが、司法書士への依頼と契約書の作成は別途必要になる。
思い立ってから引渡しまで
不動産の売買は、決めることが多いぶん期間が読みにくい。
```
買う 探す 1〜3か月 → 申込み〜契約 2週間 → 契約〜決済 1〜2か月
売る 査定 1週間 → 媒介契約 → 売れるまで 1〜3か月 → 契約〜決済 1〜2か月
```
読めない部分はどこか。買う側は「気に入る物件が出るまで」、売る側は「買い手が現れるまで」。ここだけが読めない。それ以外の手続の期間はほぼ決まっている。
だから逆算できる。引渡しの希望日が決まっているなら、そこから1〜2か月前が契約、さらに前が申込み、と逆算して動く。
購入申込書は契約書ではない
不動産の購入申込書(買付証明書)を出しても、売買契約は成立しない。
何を伝える書面か。いくらで買いたいか、いつ引き渡してほしいか、ローンを使うかどうか。売主が条件を検討するための材料である。
撤回できる。契約ではないので、申込みは撤回できる。申込証拠金を預けていた場合も返還される。
ただし順番は動く。複数の申込みが入った場合、先に出した人から順に検討されるのが通例である。不動産の売買では、この順番が結果を分けることがある。
不動産会社の中では、1件がどう回るか
①物件を預かる(媒介契約)または問い合わせを受ける②レインズと広告に載せる③内見の日程を組む④条件のやりとりを両者の間で往復させる⑤役所・法務局・現地で調査する⑥重要事項説明書と契約書を作る⑦契約に立ち会う⑧銀行と司法書士の日程を合わせる⑨決済に立ち会う。
時間がかかるのは⑤。不動産の調査は、役所を複数回まわることになる。道路の種類、上下水道の引込み、用途地域、建築の制限——窓口が分かれている。
手続だけを抜き出すと5つ
①媒介契約(書面)②重要事項説明(宅地建物取引士が、書面で)③売買契約(書面)④決済(金銭の授受)⑤登記申請(司法書士)。
①②③は書面が義務である。宅地建物取引業法が、それぞれ第34条の2・第35条・第37条で交付を義務づけている。口頭だけで済ませられる手続は無い。
⑤だけ後日になる。不動産の登記は申請してから完了まで1〜2週間かかる。ただし権利は決済の日に移っている。登記はそれを公に示す手続である。
図にするなら、縦に3本の線を引く
不動産の売買の流れは、登場人物が3者いるので、1本の線では描けない。
3本の線。①買主の線(探す→申込み→審査→契約→融資→決済)②売主の線(査定→媒介→広告→契約→抵当権抹消の準備→決済)③不動産会社の線(調査→書面→日程調整)。
3本が1点で交わる日がある。それが決済の日である。図解にするときは、この1点を最後に置いて、そこへ向かって3本の線を引くと、不動産の売買の期間と手続がそのまま読める。
自分で表にするなら、この列で作る
不動産の売買の期間は、次の列で1枚にすると見える。
```
日付 / やること / 誰が / 期限のあるもの / お金が動くか
```
期限のある行に印を付ける。手付解除の期限ローン特約の期限引渡しの日確定申告の期限(売った翌年の2月16日〜3月15日)。
お金が動く行にも印を付ける。手付金、印紙代、仲介手数料(半金ずつ)、残代金、登記費用、固定資産税の精算。不動産の売買では、決済の日に複数の支払いが重なる。
日程は、決済の日から逆算して組む
不動産の売買は、決済の日を先に決めて、そこから逆算する。
```
決済日 銀行の営業日・午前中 -1週間 司法書士が書類を確認 -2週間 金銭消費貸借契約 -3〜4週間 住宅ローン本審査の結果 -6〜8週間 売買契約
```
動かせない日がある。決済は銀行が開いている日にしかできない。月末と金曜は混みやすい。不動産の決済の日は、早めに押さえる。
買う側の手続を、書面の順に並べる
購入申込書 → 重要事項説明書 → 売買契約書 → 金銭消費貸借契約書 → 登記申請書。
署名する前に読む時間をもらう。重要事項説明書は、当日その場で初めて渡されることがある。事前に写しをもらって読んでおけば、不動産の売買の場で聞くべきことが整理できる。
写しは全部保管する。売買契約書と領収書は、将来その不動産を売るときの譲渡所得の計算で「取得費」として使う。無いと売却価格の5%しか認められない。
買う側の期間
不動産を買う側は、資金計画、物件探し、内見、購入申込み、事前審査、重要事項説明、売買契約、本審査、融資実行と決済、引渡しという順に進む。
物件が決まってから引渡しまでは、おおむね1か月半から2か月半。内訳は、申込みから契約まで1週間から2週間、契約から決済まで1か月から2か月である。
契約から決済までに時間がかかるのは、住宅ローンの本審査に2週間から3週間かかることと、売主が居住中であれば引越しの期間が要るためである。
不動産を探す期間は人によってまったく違うので、この計算には入らない。決まってからの期間だけが、ある程度読める。
不動産の売買の流れを図にするなら。縦に時間、横に3列(買う側・共通・売る側)で並べる。共通の列に入るのは売買契約と決済の2つだけで、それ以外はそれぞれが別に動く。買う側の山は本審査、売る側の山は買主が現れるまでの期間。この2つが読めれば、全体のスケジュールが引ける。
不動産の営業から見た流れ。売却の依頼を受ける(媒介契約)か、買主を見つけてくる(客付)かに分かれる。媒介契約を結んだらレインズへの登録、広告、問い合わせ対応、案内、重要事項の調査、契約書の作成、決済の立会いまでを担う。成功報酬なので、契約に至らなければ売上はゼロになる。
物件が決まってから1か月半〜2か月半
申込みから契約まで1〜2週間、契約から決済まで1〜2か月。契約から決済に時間がかかるのは、本審査に2〜3週間、売主が居住中なら引越しの期間が要るためである。
売る側の期間
不動産を売る側は、査定、媒介契約、売り出し、内見の対応、購入申込みの受領、売買契約、抵当権抹消の準備、決済と引渡しという順に進む。
買主が現れるまでの期間が読めないのが、買う側との一番の違いである。不動産流通機構が公表している成約統計には成約までにかかった日数が載っているので、自分の地域と種類の平均を確かめられる。
買主が決まってからは、契約から決済まで1か月から2か月。ここは買う側と同じである。
住み替えでは、売りと買いの日程を合わせる。先に売れば仮住まいが必要になり、先に買えば二重にローンを抱える。買替特約を入れておくか、決済日を同じ日にそろえる(同時決済)ことで調整する。
不動産の売買の流れを図にするなら、3列で並べる。縦に時間、横に「買う側」「共通」「売る側」。共通の列に入るのは売買契約と決済の2つだけで、それ以外はそれぞれが別に動く。
買う側——資金計画 → 物件探し → 内見 → 購入申込み → 事前審査 →(共通:重要事項説明・売買契約)→ 本審査 →(共通:決済と引渡し)。売る側——査定 → 媒介契約 → 売り出し → 内見の対応 → 申込みの受領 →(共通:売買契約)→ 抵当権抹消の準備と引越し →(共通:決済と引渡し)。
山は2つしかない。買う側の山は住宅ローンの本審査(2〜3週間)、売る側の山は買主が現れるまでの期間(読めない)。この2つ以外はおおむね日数が決まっているので、ここが読めれば全体のスケジュールが引ける。
立会いという言葉。決済の日に関係者が同じ場に集まることを立会いという。残金決済、残代金決済とも呼ばれるが、同じ日を指す。集まるのは売主、買主、双方の仲介業者、司法書士、融資を実行する金融機関の担当者、売主に抵当権者がいればその金融機関の担当者。司法書士が登記できる状態であることを確認して初めて送金が実行される。この確認のために、わざわざ同じ場所に集まる。
買主が現れるまでは読めない
契約から決済までは買う側と同じで1〜2か月。読めないのは買主が現れるまでの期間である。不動産流通機構の成約統計に成約までにかかった日数が載っているので、自分の地域と種類の平均を確かめられる。
買取なら早い
不動産の買取は相手が決まっているので、買主を探す期間がまるごとなくなる。査定から決済まで1か月を切ることもある。
不動産の買取の流れは、査定、条件の提示、売買契約、決済と引渡し。仲介と違って売り出し期間も内見の対応もない。
ただし不動産の書類をそろえる時間も短くなる。登記識別情報が見当たらない、相続登記が済んでいない、印鑑証明書の期限が切れているといったことが直前に判明すると、そこで日程が止まる。査定の段階で手元を確かめておく。
登記が完了するまでの日数
不動産の登記は、申請から完了までにおおむね1週間から2週間かかる。法務局の混み具合と、申請の内容で変わる。
完了すると、不動産の登記完了証と、買主には登記識別情報通知が交付される。これが従来の権利証にあたるものである。
登記が完了する前でも、所有権はすでに移っている。所有権の移転は当事者の合意と代金の支払いで生じ、登記は第三者に対抗するための要件である(民法第177条)。完了を待たずに引渡しを受けて住み始めてよい。
申請に使った添付書類は法務局で保存される。保存の期間は書類の種類によって定められている。
申請から完了まで1〜2週間
法務局の混み具合と申請の内容で変わる。完了すると登記完了証と、買主には登記識別情報通知が交付される。完了前でも所有権はすでに移っているので、引渡しを受けて住み始めてよい。
契約と決済を同じ日にできるか
できる。不動産の契約と決済を同じ日に行うことを即決済という。
成り立つのは、住宅ローンを使わない(現金で買う)場合か、融資の承認がすでに下りている場合である。ローン特約を入れる必要がないので、契約から決済までの期間を置く理由がなくなる。
ただし買主にとっては検討する時間がなくなる。重要事項の説明を受けたその場で契約し、代金を払って登記まで進むことになる。説明書を事前に受け取って読んでおくことが前提になる。
即決済ができる条件
現金で買う場合か、融資の承認がすでに下りている場合。ローン特約を入れる必要がないので、契約から決済まで期間を置く理由がなくなる。ただし買主にとっては検討する時間がなくなるので、重要事項説明書を事前に読んでおくことが前提になる。
査定にかかる日数
不動産の机上査定(簡易査定)なら、依頼した当日から2〜3日で数字が出る。所在地・面積・築年といったデータだけで計算するためである。
訪問査定は、現地を見る日程の調整に数日、見てから結果が出るまでに数日で、おおむね1週間程度になる。
売り出し価格を決めるなら訪問査定になるので、売ろうと決めてから売り出すまでに、最低でも1〜2週間はみておく。
机上なら数日、訪問なら1週間
机上査定は依頼した当日から2〜3日。訪問査定は日程の調整と結果が出るまでで、おおむね1週間程度。売り出し価格を決めるなら訪問査定になるので、売ると決めてから売り出すまで最低1〜2週間はみておく。
媒介契約から始まる
不動産の仲介の流れは、媒介契約を結ぶところから始まる。
宅地建物取引業法第34条の2により、媒介の依頼を受けたときは遅滞なく書面を作成して依頼者に交付しなければならない。そこには、媒介契約の種類、有効期間、報酬の額と支払時期、レインズへの登録の有無、業務の処理状況の報告方法が記載される。
専任・専属専任であれば、その不動産をレインズへ登録した後に登録証明書が交付される。これを受け取っていなければ、登録されたことを確かめられない。
誰が立ち会うのか
決済の場に集まるのは、売主、買主、双方の仲介業者、司法書士、融資を実行する金融機関の担当者、売主に抵当権者がいればその金融機関の担当者である。
司法書士の役割が中心にある。本人確認と書類の確認を行い、登記できる状態であることを確認して初めて送金が実行される。司法書士は決済が終わるとその足で法務局へ向かう。
本人が行けない場合は、委任状によって代理人を立てられる。ただし委任状には実印を押し、印鑑証明書を添える。
契約書に貼る印紙
不動産の譲渡に関する契約書には印紙税の軽減措置があり、平成26年4月1日から令和9年3月31日までに作成される、契約金額10万円を超えるものが対象になる。
軽減後の税額は、1,000万円を超え5,000万円以下で1万円、5,000万円を超え1億円以下で3万円である。売主用と買主用の2通を作るのが通常なので、それぞれが1通分を負担する。
申込書と契約書は別物
不動産の購入申込書(買付証明書)は、買いたいという意思と条件を示す書面である。これを出しても契約は成立しない。原則としてどちらからでも撤回できる。
契約が成立するのは、売買契約書に署名押印して手付金を交付したときである。裁判所も、買付証明書と売渡承諾書の双方が交付された事案について契約の成立を否定している(東京地裁 昭和63年2月29日判決/判例タイムズ675号174頁)。
申込書に印紙は要らない。契約書には契約金額に応じた印紙が要る。
出しても契約は成立しない
買いたいという意思と条件を示す書面で、原則としてどちらからでも撤回できる。契約が成立するのは、売買契約書に署名押印して手付金を交付したときである。申込書に印紙は要らない。